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解決事例

2022.12.26
被相続人の内縁の妻が引き出した預金を巡り、相続人である前妻の子らから遺留分侵害額請求をされたが、内縁関係の実態が重視された結果、出金が被相続人の意思に反するものではないと判断された事例

事案

内縁関係のある夫(被相続人)が亡くなったことを受けてその内縁の奥様(以下、「相談者様」と言います)からご相談をいただいた事例です。被相続人には前妻との間にお子さんが2名(長男及び長女)おりました。被相続人は、生前、公正証書遺言を作成しておりました。その内容は、自宅不動産(相続開始時の評価額約600万円)は相談者様に、所有していた株式(相続開始時の時価約2400万円)については、相談者様と前妻の子2名との間で3分の1ずつ、預貯金(相続開始時の残高約1200万円)についても、相談者様と前妻との子2名との間で3分の1ずつ遺贈又は相続させるとともに、その他記載した以外の一切の財産(現金を含む)は相談者様に遺贈するという内容でした。

相談者様は、40年以上、被相続人と一緒に暮らしており、被相続人がかつて営んでいた工場も長年手伝ってきました。相談者様は、被相続人が工場を廃業した後、被相続人の預金通帳を預かり管理するようになりましたが、被相続人が亡くなった後、自分には遺族年金が支給されないことが判明したことから、老後の生活保障にと、被相続人本人の了解のもと、複数回にわけて合計4500万円を預金口座から引き出して金庫に保管しており、相談者様や夫の生活費等に費やしていました。被相続人が亡くなった時点で、現金の残高は3000万円となっていました。

被相続人が亡くなり、公正証書遺言のとおり、相談者様、子ども2人が遺産を遺贈又は相続することとなりました。ところが、生前に被相続人の口座からの多額の出金があることを知った子らが、相談者様による被相続人の口座からの出金は被相続人の意思に反して行われたものであり、上記3000万円の現金について、被相続人から相談者様への遺贈は認められないこと、預貯金として遺言書通り3分の1ずつ遺贈又は相続すべきであることなどを主張し、遺留分減殺請求訴訟を提起してきた事例です。

解決方針

令和元年7月1日以降に相続が開始された場合は「遺留分侵害額請求」といいますが、被相続人が亡くなられたのはそれ以前でしたので、本件では、遺留分減殺請求を受けた事例です。

前妻との間の子らは、遺言書が作成された時点で被相続人はアルツハイマー型認知症に罹患しており、相談者様によってなされた口座からの出金について了承していたとは考え難いとし、この出金は被相続人に無断でなされたものであるとして、出金分は預貯金として扱われるべきであると主張しました。その他、出金行為自体が被相続人に対する不法行為だとして損害賠償請求権を相続分に応じて相続したという主張などもしてきました。

前妻の子らの主張が仮に認められると、相談者様は現金3000万円の遺贈を受けたとした場合に負担すべき遺留分に加えて、子らに対して多額の追加支払いを余儀なくされることになります。

被相続人の口座から出金がなされた場合、その出金が被相続人の意思に反するものであったのかは争点になることが多いです。その場合、出金がなされた時期(遺言書の効力が問題となった場合は、遺言書が作成された時期)における被相続人の状況、被相続人が通帳の管理を任せた背景事情から丁寧に説明して、被相続人の意思に反する出金ではないことを主張する必要があります。

本件では、40年以上内縁関係にあり、被相続人の自営業を手伝うとともに、晩年の被相続人を介護するなど、相談者様が献身的に支えてきた事実に加え、被相続人が作成した公正証書遺言の付言事項に相談者様宛のメッセージとして「長い間面倒をみてくれてありがとう。余生をのんびりと暮らしてくれることを祈っています。」といった記載があったことから、被相続人が自分の死後に相談者様が困らないように被相続人の口座から預金を引き出すことを認めていたと強く主張しました。

結果

その結果、一審判決ではこちら側の主張が全面的に認められ、現金3000万円は相談者様に遺贈されたものであることを前提とした前妻の子どもらに対する遺留分侵害額の支払いを命じる判決が出されました。

前妻の子らは控訴しましたが、控訴審においても一審の判決を支持することとなり、こちら側の勝訴となりました。

当事務所コメント

本件では、長年にわたって相談者様が被相続人と内縁関係にあったことと、その間に相談者様が被相続人の自営業の手伝いや介護をはじめ苦楽をともにしていたという実態が重視され、こちらの主張が認められる結果となりました。

また、被相続人がそのことを踏まえて公正証書遺言の付言事項に「長い間面倒をみてくれてありがとう。余生をのんびりと暮らしてくれることを祈っています。」と記載していたことも重要なポイントとなったと思われます。

公正証書遺言の付言事項は、本旨と異なり、法的な効力が生じるものではありません。そのため、被相続人が相続人を含めた親族に対する思いを自由に記載することが多いです。しかし、紛争となった場合に、被相続人がどのような思いで公正証書遺言を作成したかを明確に示す資料となります。本旨だけでなく付言事項についても紛争を予防するために記載に配慮しなければならないことを本事案が教えてくれました。

紛争予防のために遺言書を作成される場合は、このように多角的な視点をもって文言に配慮しなければ、紛争予防という本意を遂げることができなくなる恐れがあります。そういった観点からも、遺言書作成については、専門家である弁護士にご依頼されることが望ましいといえます。

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この記事の執筆者

入江・置田法律事務所

弁護士・税理士・家族信託専門士

置田浩之(おきた ひろゆき)

専門分野

相続、相続税、家族信託、企業法務

経歴

東京大学大学院法学政治研究科卒業後、東京都内の大手銀行に勤務。その後、大阪大学法科大学院に入学。司法試験合格後、平成22年1月に弁護士登録、大阪府内の法律事務所勤務を開始。平成27年12月、大阪・阿倍野に弁護士の入江貴之とともに事務所を開設。また、平成24年に税理士登録、相続財産問題や相続税対策などにも幅広く対応している。 相続問題の相談実績は年100件を超える。豊富な法律相談経験により、依頼者への親身な対応が非常に評判となっている。
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