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解決事例

2023.06.29
生前の使途不明金について不当利得返還請求訴訟を提起し、請求額の一部を支払う旨の和解を成立させた事例

事案

亡くなられたお母様(被相続人)には、長男、長女及び二女の3名の相続人がおりました。なお、お父様は5年前に既に亡くなられておりましたが、お父様の遺産分割協議はなされていないままでした。

被相続人の遺産には、実家の土地及び建物と預貯金がありました。預貯金の通帳等は長女が預かっておりました。そこで、被相続人の死後、長男が長女に遺産の内容を確認したところ、長女から知らされた被相続人の預金口座の残高が予想していたよりもあまりにも少ないことがわかりました。疑問に思った長男が預金口座の取引履歴を取り寄せたところ、被相続人が亡くなる2~3年前から合計3000万円近くの現金が、被相続人の預金口座から不自然に出金されていることが判明しました。具体的には、お父様や被相続人が開設していた定期預金口座が解約されて被相続人の普通預金口座に振り込まれ、さらにそこから短期間のうちにATMで50万円ずつが何度にもわたって繰り返し出金されていたというものでした。

長男が長女に対して使途不明金について追及したものの、長女からは何ら回答が得られず、一向に話合いができない状態となりました。そこで、使途不明金の追及について、長男からご依頼いただいたのが本事案です。

解決方針

まずは、長男の代理人として、長女及び二女に対し、代理人に就任したことを伝えるとともに、合計3000万円の出金について、誰が出金したものであり、使途が何であるかを明らかにするように求めました。

そうしたところ、長女及び二女にも代理人が就任したことを知らせる書面が届きました。その内容は、被相続人が亡くなった以降の出金は長女自らが行ったことを認めたものの、それ以前の出金について、長女や二女は何ら関与していないといったものでした。

そこで、弁護士会照会を利用して、各金融機関に対し、定期預金解約のときの払戻請求書や、解約時の伝票などを取寄せることにしました。そうしたところ、お父様の定期預金口座がお父様の亡くなった後に解約されていた上、その時の伝票には、なぜかお父様ご本人の署名がなされておりました。お父様が亡くなっている以上、ご本人が署名できるはずがありません。そこで、お父様の通帳を管理していた長女が関与しているだろうと考え、訴訟を提起して長女による取込を主張しました。

被相続人の預金口座から生前に出金された現金(使途不明金)を他の相続人が使い込んだとして不当利得返還請求する場合、その出金が被相続人の了解が無かったこと、及び、その出金を当該他の相続人が取り込んだ(利得した)ことまで立証しなければなりません。相続人のうちの1人が被相続人の通帳を管理している場合、被相続人の了解に基づいてなされていることが通常です。そのため、出金について被相続人の了解が無かったことを立証するには大きなハードルがあると言わざるを得ません。さらに、その出金を当該相続人が利得したことまで立証することにも、大きなハードルがあります。いかに短期間に不自然な出金がなされていたとしても、上記各立証を行うことはかなり難しいと言わざるを得ません。

本件においても、各金融機関の取引履歴や、弁護士会照会により入手した解約時の払戻請求書及び伝票の筆跡等を細かく検討し、長女による出金であるという点を粘り強く主張しました。その結果、払戻請求書や伝票の筆跡が、日本語の読み書きが不自由であった被相続人によるものではなく、長女やその夫が代筆したものであることや、長女夫婦が被相続人による預金解約手続きの多くの場面に同席していたこと、ATMによる出金のうち一部については長女によるものであったことなどの事実を明らかにすることに成功しましたが、残念ながら、長女が出金した現金を利得したという心証を裁判官に抱かせるまでには至りませんでした。 

もっとも、被相続人の預金口座からの出金と同口座への入金との対応をつぶさに検討した結果、出金された金額と入金された金額に約300万円の差額が生じていることを発見しました。その点を長女に追及した結果、差額300万円については長女名義の定期預金口座に入金し、今なお預けたままになっていることをついに長女が認めるに至りました。そこで、上記300万円を解決金として、長女が長男に支払うという内容で和解が成立するに至りました。

当事務所コメント

上にも述べましたとおり、生前の被相続人の預金口座からの出金が使途不明金であるとして不当利得返還請求訴訟を提起する場合は、どうしても立証のハードルが高いと言わざるを得ません。出金がなされていた期間、被相続人の認知症がかなり進行していたり、昏睡状態で入院していたりといった、被相続人の意思能力がなかったと認められるような特殊な事情がない限り、裁判所は、各出金について被相続人の了解が得られていないこと、及び、出金した相続人がその金額を利得したことについて、なかなか認定してくれません。

とはいえ、金融機関が保管している入出金履歴や払戻伝票など当時の記録を詳細に検討することで、こちら側の主張に一定の根拠があることを裁判所に認めさせる糸口を見出すことは可能です。本件でも、請求金額の全額を立証することは叶いませんでしたが、一部とはいえ預金の利得を相手方に認めさせるに至り、その金額をもとに和解を成立させることができました。

使途不明金が争点となる裁判において判決まで至った場合、主張が認められるか認められないか、0か100かの結論になる場合が大半です。本事案でも、仮に判決にまで至っていたとすれば、こちら側の請求が全額認められない請求棄却の判決がなされる可能性が高い状況でした。そのような中で、請求金額の一部とはいえ和解により解決金の支払を受けることができ、結果として、依頼者にご満足いただくことができました。

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この記事の執筆者

入江・置田法律事務所

弁護士・税理士・家族信託専門士

置田浩之(おきた ひろゆき)

専門分野

相続、相続税、家族信託、企業法務

経歴

東京大学大学院法学政治研究科卒業後、東京都内の大手銀行に勤務。その後、大阪大学法科大学院に入学。司法試験合格後、平成22年1月に弁護士登録、大阪府内の法律事務所勤務を開始。平成27年12月、大阪・阿倍野に弁護士の入江貴之とともに事務所を開設。また、平成24年に税理士登録、相続財産問題や相続税対策などにも幅広く対応している。 相続問題の相談実績は年100件を超える。豊富な法律相談経験により、依頼者への親身な対応が非常に評判となっている。
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