解決事例
- 2024.05.31
- 遺産分割調停において、取得予定の不動産の買取りを希望する不動産業者から金銭を借り入れ、他の相続人に対する代償金を支払うことにより、全ての遺産を取得することに成功した事例
・事案
お父様の遺産分割について、長男がご相談に来られた事案です。お母様を早くに亡くし、お父様が寝屋川市にある実家に長年お一人で暮らしておりました。お父様には、長男と二男と2人の子どもがおりましたが、お父様が亡くなられる前に二男が病気で亡くなっていたので、お父様の相続人は、長男と亡くなった二男の子1名(代襲相続人)の計2名となります。
お父様は、生前、松原市に2か所の土地を持っておられました。1か所が実家であり、もう1か所には、長男に対し、「ここに住んでくれ。」と言って、長男が自分の費用で建物を建てて居住しておりました。それ以外の遺産としては、預貯金がわずかにある程度でした。
長男と二男の子とは、もともと疎遠な関係にありましたが、お父様の死亡後、長男が二男の子に連絡を試みようとしても、接触を拒まれるといった状況が続いておりました。
そうしたところ、二男の子から、遺産分割調停を申し立てられました。二男の子の主張は、不動産の取得は希望しないから、その代わりに代償金の支払を希望するといった内容でした。
・解決方針
長男がお父様の相続人であり、二男が既に亡くなっていることから、その子が代襲相続人となりますので、それぞれの法定相続分は2分の1ずつとなります。
お父様の主な遺産である2か所の不動産は、評価額が合計約2000万円のものでした。
長男としては、不動産を取得することには同意するものの、その評価額の2分の1に相当する1000万円もの代償金を支払えるだけの資力がないといった点で悩んでおられました。また、長男には持病があったため、現在、仕事はしているものの、多くの収入を見込むことはできず、銀行等の金融機関から借入れを行うことも現実的に難しいといった状況でした。
そこで、苦渋の策として、不動産すべてを長男が取得することを前提に、自宅建物と、遺産の一部である底地を売却することで資金を用立てする方針をたてました。
長男の自宅のある場所は、比較的交通の便が良く、売買の需要が見込めるものでした。そこで、もともとお父様の代から付き合いのある不動産業者に長男を通じて相談してみたところ、その業者が買い取る形で代償金の原資を用意してもらえることになりました。
こうして、その不動産業者のご了承のもと、先に代償金の原資として1000万円を預かることができました。それを踏まえ、遺産を長男が全て取得し、その代わりに長男が二男の子に対して代償金1000万円を支払うといった内容の調停を成立させた上で、長男がその業者に自宅建物と底地とを併せて売却し、預かっていた1000万円分を清算することができました。
・事務所コメント
被相続人名義の不動産に相続人の1人が居住している場合、その相続人が当該不動産を取得するといった遺産分割の方法が、客観的には合理的といえます。ただ、取得する以上は、他の相続人に対し、その相続分に相当する代償金を支払わなければなりません。ただ、不動産である以上、それなりの評価額となることが多いため、必然的に、支払うべき代償金が多額になってしまうことが多いです。その場合、その居住している相続人がそのような多額の代償金を支払えるのかといった問題に直面することになります。
支払えるだけの資力がある場合は全く問題ありませんが、資力がない場合に用立てするための方法を検討する必要があります。銀行から融資を受けることができればよいのですが、被相続人が高齢で亡くなった場合、当然ながら相続人もそれなりに高齢に及ぶことは珍しくありません。そのような高齢の相続人が銀行から融資を受けることは容易ではない場合が少なくありません。
そうなると、遺産を売却して換価するといった方法しか取り得ないことになります。今回は、お父様の代からお付き合いのある不動産業者というご縁があったこと、その業者の方からご協力をいただけたことにより、代償金の原資を用意することが叶いました。
ただし、今回のような機会に恵まれるケースはそう多くないと思われます。そうした場合、最終的に遺産となる不動産を競売して換価するといった事態につながる恐れもあります。このような事態を回避するためには、(そもそも被相続人名義の土地の上に相続人が居住しているといった事態を招かないことが一番ですが)、被相続人がお元気なうちに遺言書を作成してもらうことが最も有効な方法といえます。
遺言書作成の重要性を強く感じさせる事案となりました。
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この記事の執筆者
入江・置田法律事務所
弁護士・税理士・家族信託専門士
置田浩之(おきた ひろゆき)