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解決事例

2024.06.27
兄弟姉妹の相続について、他の相続人から相続放棄等の協力を受けつつ遺産分割協議の成立に成功した事例

事案

  相談者の亡くなった父親は、4人兄弟の長男だったようです。兄弟構成としては、長男、二男、三男及び長女の4人です。そのうち、三男が亡くなったとの連絡を受けたようです。長男である相談者の父親は10年以上前に亡くなっており、二男は5年前に亡くなり、子が2人いらっしゃるようです。三男には配偶者も子もいなかったようですが、幸いにも成年後見人が就いた状態で施設入所されていたようでした。三男の訃報はその成年後見人を通じて受けたものだったようです。その成年後見人によれば、亡くなった三男には、遺産として預貯金が600万円ほどあるとのことでした。

  ところが、相談者としては、二男の子らとも長女とも疎遠だったため、どのように連絡をとったらよいか分からず、今後の手続きについてどうすればよいかとご相談に来られたのが本件です。

解決方針

  本件では、亡くなられた三男に成年後見人が就いていたため、成年後見人が作成した財産目録が存在していたことから、その遺産の全体像を把握することが容易でした。それにより、どの金融機関のどの口座に対していくらの残高があるのかを知ることができました。

  また、併せて被相続人の戸籍を調査し、相続人の範囲を確認する必要があります。そこで、相続人の戸籍と戸籍の附票を取り寄せて、全員の相続人の住民票上の住所を調べました。収集した戸籍によれば、長女が養子縁組により兄妹となっていたことが判明しました。通常、養子縁組であったとしても相続人の立場に違いはありません。そこで、二男の子らに加えて長女に対しても受任通知を送付しました。

ところが、二男の子らからは受任通知を見たとの連絡を受け、遺産分割協議に協力するとの返答をいただきましたが、長女からは何ら連絡を受けられませんでした。このままでは遺産分割協議を続けることができません。ただ、長女の戸籍の附票によれば、現住所は大阪市内であり、事務所からも比較的近かったので、直接、長女に会って説明をするとともにご意見を伺いに行くことにしました。幸い、ご自宅に行ったときにご在宅だったため、挨拶とともに事情を説明しました。長女によれば、いきなり弁護士から書面が届き、どのように対応したらよいかわからず放置してしまったとのことでした。ご意向を伺ったところ、自分が養子の立場であること、亡くなった三男とは疎遠であったこともあり遺産分割協議のようなややこしい手続きには関与したくないことといった率直なご意見を伺いました。遺産分割協議といった手続きから解放される直截的な手段としては相続放棄があります。そこで、相続放棄の手続きについてご説明し、その手続きを行うことでご了承をいただきました。長女に委任状をご作成いただき、当方が長女の代理人として相続放棄の手続きを行いました。

  結果、本来であれば4人の相続人であったところ、1人が相続放棄の手続きを行ったことにより3人の相続人となり、その相続人間で遺産分割協議を行い、約600万円の預貯金について3等分の200万円ずつで分配する合意が成立し、金融機関に対して払い戻しの手続きを行うことができました。

当事務所コメント

本件では、幸いにも成年後見人作成の財産目録がありましたが、一般的には、そのような目録が既に作成されていること自体稀です。そこで、通常は、被相続人の住所近くの金融機関に対し、相続人の立場に基づいて被相続人名義の口座の有無について照会手続きを行い、被相続人が預貯金口座を持っているかどうかを調べる必要があります。

  また、遺産分割協議書には各相続人ご本人による署名押印が必要ですが、ご本人であることを示すために実印での押捺が必要で、印鑑証明書の添付も必要となります。金融機関に対して解約及び払戻しの手続きをする際に必ず提出を求められますし、法務局に対して相続登記の手続きをする際にも必ず提出を求められるからです。ただ、印鑑登録の手続き自体をなさっていない方もいらっしゃったりします。その場合、遺産分割協議のためにわざわざ役所で印鑑登録手続きをしていただく必要がありますが、煩雑な手続きを回避するには相続放棄の手続きが有用です。被相続人と疎遠な関係であり、亡くなったことすら知らなかったのであれば、当方が受任通知を送ったことで被相続人の死亡の事実を知ったとして、そこから起算して3か月以内であれば相続放棄の手続きをとることも可能です。

  本件では、そのような手続きをとることにより、結果として、円滑に遺産分割協議を行うことができたとともに、相談者の取り分を増やすことにも成功しました。

最後に

 相続に関する問題が発生している場合、精神的負担感はかなりのものです。しかし,1人で悩んでも解決策が見つからず、その間に時間が経過し、問題が根深くなることがあります。弁護士は守秘義務を負っていますので、相談内容は当然,相談に来られたことしていることを他人に知られることはありません。

 あなたとあなたのご家族のためにも、一刻も早く、専門的知見のある弁護士に相談し、状況を分析してもらった上で、適切な措置を取ることをお奨めします。当事務所では、相続に関する相談は、初回相談無料となっておりますので、お気軽にご相談くださればと思います。

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この記事の執筆者

入江・置田法律事務所

弁護士・税理士・家族信託専門士

置田浩之(おきた ひろゆき)

専門分野

相続、相続税、家族信託、企業法務

経歴

東京大学大学院法学政治研究科卒業後、東京都内の大手銀行に勤務。その後、大阪大学法科大学院に入学。司法試験合格後、平成22年1月に弁護士登録、大阪府内の法律事務所勤務を開始。平成27年12月、大阪・阿倍野に弁護士の入江貴之とともに事務所を開設。また、平成24年に税理士登録、相続財産問題や相続税対策などにも幅広く対応している。 相続問題の相談実績は年100件を超える。豊富な法律相談経験により、依頼者への親身な対応が非常に評判となっている。
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