解決事例
- 2026.10.06
- 遺言書作成当時、遺言能力がなかったとして遺言無効確認訴訟が提起されたが、判決により遺言能力が認められた事案

まとめ

事案
相談者の母が自筆証書遺言を作成して亡くなったケースです。
母は生前、「相談者に全財産を相続させる」という内容の自筆証書遺言を作成していましたが、作成当時は高齢で認知症に罹患していました。
母の死後、遺言内容を知った相談者の兄である相手方が、「母は遺言書作成当時、高度の認知症を発症しており、遺言能力はなかった」と主張し、遺言無効確認訴訟を提起してきました。
訴訟においては、母の通院先病院の診療記録や介護記録、看護日誌など、多量の資料が証拠として提出されました。
相手方は、これらの記録にある失見当識や問題行動などの記述を捉え、母に遺言能力がなかったと強く主張してきました。
当事務所の対応方針
遺言無効確認訴訟において遺言能力の有無が争点となる場合、単に認知症の診断が存在したか否かだけでなく、当時の認知機能の程度、遺言内容の複雑さ、遺言作成に至る経緯や動機などを総合的に考慮して判断されます。
本件の遺言は「全財産を相談者に相続させる」という理解しやすい単純な内容であったため、極めて高度で複雑な判断能力までは要求されない点も考慮要素となりました。
そこで、当事務所では、相手方から証拠として提出された多量の診療記録や介護記録を精査し、認知機能低下の程度は高度ではなく中等度にとどまっていたことを確認しました。また、日によって状態の波があり、意思疎通や簡単な判断が十分可能であった場面も多数記録されていました。当方はこれらの点に着目し、本件遺言の作成時点において遺言内容を理解し判断する能力は保持されていたと主張しました。
記録の中には、相談者が母の入居していた施設に頻繁に面会に訪れて身の回りの世話をしていた一方で、相手方との間には日常的な関わり合いの程度に大きな差があったことや、母と相手方との間で感情的な不和が生じていたことが確認できる記述が含まれていました。
また、遺言能力の評価においては、遺言者がなぜそのような内容の遺言を作成したのかという動機の合理性も考慮されます。母が相手方ではなく相談者に全財産を相続させる内容の遺言を作成した背景には、日頃の身の回りの世話や人間関係に基づく自然な動機が存在していたことを、記録の記載を根拠として裁判所に提示し、主張の補強を図りました。 遺言書の作成日が相談者の誕生日であったことも、遺言者が日頃の身の回りの世話を相談者がしてくれたことへの感謝の意味が込められていたことものであったと主張しました。
審理の結果、裁判所は当方の主張を踏まえ、母の認知症の程度は高度とまでは言えず、遺言の内容を理解する遺言能力を有していたと認定しました。これにより、自筆証書遺言の有効性が正式に認められました。
本件に関するコメント
高齢に伴う認知症を発症している方の遺言書の効力が争われる事案では、医療記録や介護記録といった客観的な書証の分析が非常に重要となります。記録に記載された断片的な症状のみにとらわれることなく、全体を時系列で把握し、遺言作成当時の判断能力の程度や遺言に至る動機・背景まで多角的に分析・整理することが、適切な結論を得るうえで不可欠となります。
相手方から遺言無効を主張された場合や、訴訟への対応でお悩みの方は、当事務所までぜひ一度ご相談ください。
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この記事の執筆者

入江・置田法律事務所
弁護士・税理士・家族信託専門士
置田浩之(おきた ひろゆき)




























