解決事例
- 2021.03.26
- 遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)において、受遺者らの生前贈与を明らかにすることで、遺留分侵害額の大幅な増額に成功した事例
事案
相談者には既に亡くなった父親がおり,さらにその父親(相談者からみた祖父)が亡くなられました。相続人は,祖父の子であり相談者からみて叔父にあたる方と伯母にあたる方,相談者の3人です。
祖父は,生前,遺言書を書いており,その内容は,相談者に対し,預貯金4000万円,叔父と伯母に対し,その他の預貯金及び多数の不動産を各2分の1ずつ相続させるというものでした。また,祖父は,遺言書で遺言執行者として、とある事務所の弁護士を指定していました。
その後,遺言執行者である弁護士から,祖父の遺産について資料の送付を受けたところ,遺産総額が不動産の評価額や預貯金を含めるとおよそ4億円あることが発覚したため,相談者が遺留分を主張したいとのことでご依頼戴きました。
解決方針
遺留分減殺請求(侵害額請求)を行う場合,他の相続人に対して早期に請求の意思表示を行う必要があります。そのため,早速,叔父と伯母に対してその旨の内容証明郵便を送付し,その後,遺言執行者から送付された遺産の内容を確認して,相談者の遺留分侵害額がいくらなのかを詳細に算定しました。
遺留分侵害額の算定には,祖父の遺産の他に,祖父から各相続人への生前贈与も考慮する必要があります。そのため,叔父と伯母に対して,それぞれ祖父から生前贈与がなされていないかどうかを確認,調査した結果,それぞれ複数の不動産を贈与されており、その合計金額が1億円近くに上ることが判明しました。そこで、祖父の遺産にこれらの生前贈与を加算して算定し直した結果,遺言書で相続される預貯金4000万円を除いても相談者の遺留分侵害額が4000万円以上あることが判明しました。
そこで,叔父と伯母に対して相談者の遺留分侵害額を請求し,支払金額の調整と支払方法について協議しました。ここで,問題となったのが,叔父も伯母も現時点で相談者に支払える金額が手元になく,祖父の遺産の相続がない限り,相談者に遺留分侵害額を支払えないということでした。しかし,叔父と伯母との間で,遺産となっている多数の不動産をどのように分割するか争いがあり,遅々として協議が進んでいないといった状態でした。
そこで,遺言執行者である弁護士も交えて交渉を行い,遺言執行者が管理する祖父の預貯金(叔父と伯母がそれぞれ2分の1ずつ相続する予定のものです。)から,叔父と伯母がそれぞれ相談者に支払うことで合意した金額を,先立って,相談者に対する遺留分侵害額として支払うことで交渉がまとまりました。
事務所コメント
遺言書で自分が相続する財産がある場合であっても,遺留分を請求できる余地はあります。その場合,明らかになっている被相続人の遺産だけでなく、他の受遺者らの生前贈与の有無やその総額を調べることが重要となってきます。本事案では、他の受遺者が被相続人から生前に多数の不動産を生前贈与されていたことを比較的速やかに開示していただいたおかげで、交渉段階でのスムーズな解決を図ることができました。
一方で,他の相続人に遺留分侵害額を支払える十分な資力があるのかという困難な問題に直面することもあります。本件では,叔父と伯母がそれぞれ相談者に遺留分侵害額を支払うための現金を用意するために,2者間で遺産分割協議がまとまるまで待たなければならないといった事態に陥る可能性がありました。このような事態を回避できた重要なファクターこそ,遺言書で遺言執行者が指定されていたといった事情でした。
このように,本件は,相続紛争の円滑な解決のためには,遺留分侵害額の早期の算定だけでなく,遺言で遺言執行者を指定することも非常に重要なポイントであることを感じさせるものでした。
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この記事の執筆者
入江・置田法律事務所
弁護士・税理士・家族信託専門士
置田浩之(おきた ひろゆき)