解決事例
- 2022.10.28
- 遺産分割において寄与分と特別の寄与分が争点となり、依頼者の主張が一部認められた事例
相談内容
お父様(被相続人)が亡くなられました。お母様は10年以上前に既に亡くなられていたため、相続人は、長女と次女の2名となります。遺産は、お父様が居住されていた実家の土地建物と、その土地に隣接する土地があり、その土地上に、長女の夫が自分名義の建物を建築して長女とともに居住しておりました。被相続人の生前は、専ら、隣に住んでいた長女が被相続人の世話をしており、通院介助やご飯の用意、実家の掃除や庭の整備等を行っていました。
被相続人が亡くなられた後に、当事者間どうしで遺産分割協議が行われましたが、長女側がこれまで世話してきた事情を考慮して欲しいと主張し、それに対し、次女側が通常の親子関係による扶助義務の範囲内に過ぎないと反論し、議論が平行線となりました。そこで、どうすればよいかと長女側から相談に来られたのが本事案です。
当事務所の対応方針
当事者間の協議ではまとまることが困難なため、遺産分割調停を申立てるとともに、寄与分を定める処分調停も併せて申し立てました。
寄与分は、「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるとき」に認められます(民法904条の2)。一方、親子関係であれば、お互いに扶助する義務があることが前提となります(民法730条)。そのため、寄与分が認められるためには、この扶助義務を超える「特別の」寄与であることが必要となります。この点、被相続人を療養看護した場合の寄与が認められるためには、被相続人が要介護2以上であることが目安とされております。そこで、介護認定を受けた時期と照らし合わしながら、長女が行ってきた療養看護の内容を具体的に主張しました。
また、遺産分割調停において、長女側が自ら居住する実家の隣接地の取得を希望し、次女側は、実家の土地建物の取得を希望しましたが、長女らが居住する土地の評価額について、更地価格として評価すべきと主張してきました。
しかし、隣接地には長女の夫名義の建物が建てられております。そのため、長女側が実家の隣接地に夫名義の建物を建築するにあたり、被相続人と長女の夫との間に、その土地の使用貸借契約があったというべきです。この場合、土地の評価額は、更地価格ではなく、使用借権の負担があるものとして減額されるべきです。(なお、無償で使用できることを前提とする使用借権よりも賃料を支払って使用することを前提とする賃借権の方がより保護される権利ですので、賃借権の負担があった場合の方が更地価格よりも減額される割合が大きくなります。しかし、本件の場合は、長女の夫が被相続人に対して賃料を支払っていたといった事情がありませんでしたので、長女の夫の使用借権があるものとして主張を行いました。)
こちら側の主張を踏まえ、裁判所から、 寄与分については、一部こちらの主張が認められる形で、裁判所の考える金額を提示され、実家の隣接地の評価額については、使用借権の負担があるものとして更地価格よりも減額されるべきとの見解をいただきました。
そこで、裁判所の見解に基づき、長女の寄与分を考慮するにあたり、次女が取得を希望する実家の土地部分の一部を分筆することとし、長女が居住する隣接地に加えてその分筆された土地を取得するという形で遺産分割調停がまとまりました。
事務所コメント
遺産分割のご相談を受ける際、被相続人に対して療養看護してきたという事情を遺産分割協議で考慮して欲しいといったご要望を伺うことが多々ございます。
しかし、上記のとおり、「特別の」寄与として裁判所が認めるには、若干のハードルがあると言わざるを得ません。そのような場合でも、被相続人の要介護レベルを基礎づける資料を証拠として提出したり、被相続人に対して行ってきた療養看護の具体的な内容について主張したりすることで、こちらの主張する寄与分のうち一部だけでも認められる形となりました。また、寄与分については、療養看護してきた内容を、具体的にいくらとして評価して金額を算定するのかといった問題もあります。
そのため、非常に専門的な判断が必要となってまいりますので、寄与分についてお考えの方は、是非とも当事務所までご相談ください。
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この記事の執筆者
入江・置田法律事務所
弁護士・税理士・家族信託専門士
置田浩之(おきた ひろゆき)