解決事例
- 2025.04.21
- 遺言執行者として、遺言書に基づく遺産の分配をし、相続税の当初申告をした後、遺留分の支払いに関する合意を成立させたことに伴う相続税の修正申告、更正の請求をした事例
ご相談者属性
【被相続人】
父
【相続人】
長男、二男
【相続財産】
自宅:1000万円
現預金:7000万円
事案概要
相談者は、亡くなられたお父様の二男にあたり、お父様が亡くなるまで自宅で同居していました。相談者には兄がいたため、相続人は相談者の兄(長男)と相談者(二男)の2人になります。お父様の遺産としては、大阪の自宅(相続税評価額ベースで土地建物合わせて約1000万円)の他、現預金が約7000万円ありました。
お父様は生前に自筆証書遺言を作成しており、そこには、自分の死後、現預金のうち1000万円ずつ長男、二男に各相続させ、自宅と残りの現預金は先祖の祭祀を承継する者に譲る、第1権利者を二男と、第2権利者を長男とすると書かれていました。
そこで、二男が遺言書を持参して当事務所に相談に来られたのが本事案になります。
当事務所の解決方針
上記のような遺言書において、まずは遺言執行者を選任する必要があることから、二男が家庭裁判所に申立てることにより、当事務所の弁護士が遺言執行者に就任しました。
本事案では、お父様の遺産総額が約8000万円に対し相続人が子ども2人でしたので、相続税申告が必要となることが見込まれました。遺言執行者に就いた弁護士は税理士資格も保有していましたので、税理士として、長男、二男双方から相続税申告の依頼も受けることとし、遺言執行手続きと並行して相続税申告に向けた準備も進めていくことにしました。
まずは遺言執行者として、金融機関への預金解約の手続きを進め、現預金7000万円を解約することに成功しました。
自宅についても、遺言に基づき登記名義を二男に変更しようとしましたが、遺言の記載内容が不明瞭なことを理由に法務局から登記申請を拒否されました。
そこで、相続税申告の期限も迫っていたことから、遺言書の記載とおり、長男が現預金1000万円、二男が残りすべての遺産を取得することを前提として相続税申告をすることにしました。これによれば、各人の負担すべき相続税額は、長男が150万円、二男が1050万円の合計1200万円にのぼりましたが、当事務所預かり口座で保管中の現預金から納付することとしました。
その後、遺言執行者として長男と協議した末、長男に二男から遺留分侵害額を支払うことを条件に、自宅を二男に相続させる旨の遺産分割協議書に双方が署名押印することとなりました。長男の遺留分侵害額は1000万円((1000万+7000万)×1/4―1000万)となり、遺留分侵害額の支払いに関する合意書を交わしたうえ、当事務所預かり口座から長男の口座に1000万円を支払いました。
遺留分侵害額支払いの結果、各人の負担すべき相続税額は、長男が150万円から300万円に、二男が1050万円から900万円に変更されることとなりました。そこで、長男について、相続税修正申告をするとともに、150万円(300万―150万)を追加納付することになりました。二男については、更正の請求により、150万円が還付されることとなりました。
本件における弁護士事務所コメント
本事案では、遺言執行者である弁護士が税理士として相続税申告も担当することにより、遺言執行に基づく当初申告から、遺留分の支払いに基づく修正申告及び更正の請求により、一気通貫した形で手続きをスムーズに進めていくことに成功しました。
弁護士と税理士のダブル資格を有する専門家が関与することにより、遺言執行や遺留分支払いといった法務の手続きと相続税の当初申告や修正申告・更正の請求といった税務の手続きを一体として進めていくことができた稀な事例と言えるでしょう。
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この記事の執筆者
入江・置田法律事務所
弁護士・税理士・家族信託専門士
置田浩之(おきた ひろゆき)