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遺産分割問題解決の流れ

相続が発生した場合、亡くなられた方の作成した遺言書があるかないかで、その後の流れが大きく違ってきます。

遺言書がある場合、遺言の内容に沿って相続することとなり、遺産分割は原則として不要となります。

これに対して、遺言書がない場合、遺産分割協議書を作成の上、相続することとなるため、相続人間の遺産分割協議が必要となります。 

(1) 遺言書がある場合

亡くなられた方の遺言書がある場合、原則として、遺言の内容に沿った相続を行います。

しかし、遺言書の内容が遺産すべてを網羅していない場合には、漏れている遺産について、遺産分割協議が必要になります。

また、たとえば、「長男に1/2を、次男に1/4を、三男に1/4を相続させる」といった各相続人の相続割合だけを包括的に定める遺言の場合にも、具体的な遺産の帰属を決めるために、別途遺産分割協議が必要です。

また、遺言書がある場合であっても、相続人全員が合意すれば、遺言書の内容と異なる遺産分割をすることは可能であると考えられています。 

他方において、遺言書の形式面に不備がある場合本人が書いたものかどうか確認できない場合遺言書作成したときに、本人に遺言能力が無かった場合などには、遺言の効力そのものが認められないことがあります。このような場合には、やはり相続人間の遺産分割協議が必要になります。

実務上、非常によく争いになるのが遺留分を侵害する遺言のケースです。例えば、兄弟が3人いるのに「長男にすべてを相続させる」という内容の遺言書がある場合、他の兄弟2人の遺留分が侵害されていることになります。この場合、遺言書そのものは有効ですが、他の相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます。

>>遺留分侵害額請求をお考えの方へ

(2) 遺言がない場合

亡くなられた方の遺言書がない場合には、法定相続人全員による遺産分割協議書を作成することになります。遺産分割協議書がなければ、遺産相続の手続きを行うことができません。

この場合の遺産分割の流れは、次のようになります。

①相続調査

遺産分割協議に当たっては、まずは法定相続人と相続財産の確定が必要となりますので、相続人調査相続財産調査が不可欠です。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集したり、被相続人の財産目録を作成します。
 
相続人調査と相続財産調査をしっかりしておかないと、遺産分割協議が終了した後に新たな相続人が見つかったり、新たな遺産が発見されたりした場合、せっかくまとまった遺産分割協議が無効となる可能性がありますので、細心の注意が必要です。

そのような事態に陥らないためにも、事案が複雑なケースでは、相続人調査や相続財産調査の段階から専門家である弁護士に依頼されたほうが良いでしょう。

>>相続人・相続財産がわからずお困りの方はこちら

②遺産分割協議

相続調査によって、相続人と相続財産が確定したら、遺産分割協議を行います。

これは、平たく言えば、遺産を誰にどのように分けるかについての相続人間の話し合いです。
し合いがまとまった場合は、その内容に基づいて遺産分割協議書を作成し、相続手続きを行います。

>>遺産分割協議でお困りの方へ 

③調停

遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることになります。調停とは、簡単に言えば、家庭裁判所という場を借りた、調停委員を仲介者とした話し合いです。

調停手続きは、本人が申し立てることも可能ですが、相続に関する専門的知識や経験のある弁護士に依頼されたほうが、ご自身の希望に沿う形での話し合いが期待できます。

特に、相続人のうちの一人でも弁護士が代理人に就いている場合、こちらとしても弁護士を就けるべきといえます。

>>遺産分割調停でお困りの方へ 

④審判

調停が不調(不成立)になった場合、自動的に審判の手続きに移行します。

審判手続では、裁判官が双方の主張を聞いたうえで、相続人間の均衡を考慮して、相続分にしたがった分割を行うよう、審判を下します。審判は、いったん下されると判決と同様の効力があり、原則としてその効力を覆すことはできません。

自分に有利な審判が下されるよう、弁護士に依頼のうえ、専門的な見地に立った主張・立証を展開する必要があります。

⑤訴訟

遺産分割の前提となる法定相続人の範囲相続財産の範囲遺言そのものの有効性などに関して争いがある場合、調停や審判の申立てとは別に、民事訴訟を提起することもあります。

上記のような遺産分割の前提問題について争いがあるままに遺産分割調停を申し立てても、話し合いが平行線で終わってしまうことから、先に訴訟を提起し、確定判決を得ることで、前提問題に決着をつけておく必要があるからです。こうした民事訴訟の場合は、ほとんどのケースで双方に代理人の弁護士が就くことになります。

>>遺産分割に関する訴訟について

 遺産分割を行う場合、上記のような解決までの流れの全体像を踏まえたうえで、最適な解決方法を考える必要があります。

あくまで当事者同士の話し合いで解決する方がいいのか、家庭裁判所に調停を申し立てたほうがいいのか、訴訟を提起したほうがいいのかは、あなたの状況によってケースバイケースです。

遺産分割について弁護士にご相談いただく場合には、ご相談者様の希望を伺った上で、これらの解決までの流れの全体像を踏まえて、最適な解決方法をアドバイスさせていただきます。

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この記事の執筆者

入江・置田法律事務所

弁護士・税理士・家族信託専門士

置田浩之(おきた ひろゆき)

専門分野

相続、相続税、家族信託、企業法務

経歴

東京大学大学院法学政治研究科卒業後、東京都内の大手銀行に勤務。その後、大阪大学法科大学院に入学。司法試験合格後、平成22年1月に弁護士登録、大阪府内の法律事務所勤務を開始。平成27年12月、大阪・阿倍野に弁護士の入江貴之とともに事務所を開設。また、平成24年に税理士登録、相続財産問題や相続税対策などにも幅広く対応している。 相続問題の相談実績は年100件を超える。豊富な法律相談経験により、依頼者への親身な対応が非常に評判となっている。
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