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解決事例

2022.03.30
養父からの離縁の訴えを斥けて将来の相続人たる地位を維持した事例

相談内容

 依頼者は養子,相手方は養父で,養母はすでに他界していました。養父には実子はおらず,養父が亡くなった場合,依頼者は,将来,唯一の相続人となる方でした。

 ところが,養父は,依頼者がその妻に対し,度々,暴言や暴力を繰り返していたことなどを理由として,離縁の訴えを提起しました。

 この訴訟との前後関係は不明ですが,養父は第三者であるA氏に対し,遺産を全てA氏に相続させる内容の遺言を作成していたようです。

 依頼者は,当初,養父が本当に離縁を望むのであれば応じる意向もありながら,他方,A氏が,高齢である養父に対し,依頼者との養子縁組を解消し,A氏に全ての遺産を相続させる旨の遺言書を作成するよううまく誘導したのではないか,とも考えておられ,この離縁訴訟への対応を依頼されました。

当事務所の対応方針

 離縁が認められるか否かの基準は,「縁組を継続し難い重大な事由」(民法814条1項3号)があるか否かです。

 この条文の解釈として,裁判例では,養親子としての精神的・経済的な生活共同体の維持もしくはその回復が著しく困難な程度に破綻しているか否かがポントになります。

 当初,依頼者は,養父側が主張するように,妻への暴言や暴力等もあったことなど,養父側の主張を認めておられたうえ,養父の真意なのであれば離縁にも応じるとの意向もあったため,訴訟上の和解によって着地点を探る方針をとることになるものと予想されました。

 しかし,事情を細かく聴き取り,分析してゆくと,妻への暴言・暴力は,夫婦喧嘩の中で互いになされていたことや,そもそも,この夫婦喧嘩も,高齢故に独特な感覚を持つ養父への接し方の方針を巡ってなされていたものであること,また,そもそも,養父がこのような喧嘩を目撃したのが1回程度であったことなどが分かりました。むしろ,依頼者は,養父の心身,また,経済面でも充実した生活を送れるよう十分な支援をしていることも分かりました。

 そこで,訴訟では離縁請求の棄却を目指して争ってゆくとの方針を定め,上記の事情を主張立証していきました。養父に対する当事者尋問も実施されましたが、養父からは依頼者との離縁を求める具体的理由が明らかにされず、離縁意思も明確にされませんでした。

 その結果,裁判所としては、依頼者と養親との養親子関係が維持・回復が著しく困難な程度に破綻しているとはいえないとして、請求棄却の判決を得ました。

 結局,終わってみれば,依頼者は養父と現在も平穏に同居されていると聞いています。

事務所コメント

 ご高齢者の方が多くの資産をお持ちの場合、将来の相続を見据え、親族や利害関係者間で相続争いの前哨戦ともいうべき争いが生じることがあります。ご本人が高齢であり、自分の意思を明確に示すことができない事情がある場合、紛争はより複雑化します。

 本件は、遺贈を期待する第三者からの働きかけにより養親から離縁の請求をされるという、稀なケースではありましたが、養親のご本人の離縁意思が訴訟において明確に示されなかったこともあり、勝訴を勝ち取ることができました。

 被相続人ご本人の真意がどこにあるのかを、諦めず丹念に探ることの重要性を改めて痛感させられた事案でした。

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この記事の執筆者

入江・置田法律事務所

弁護士・税理士・家族信託専門士

置田浩之(おきた ひろゆき)

専門分野

相続、相続税、家族信託、企業法務

経歴

東京大学大学院法学政治研究科卒業後、東京都内の大手銀行に勤務。その後、大阪大学法科大学院に入学。司法試験合格後、平成22年1月に弁護士登録、大阪府内の法律事務所勤務を開始。平成27年12月、大阪・阿倍野に弁護士の入江貴之とともに事務所を開設。また、平成24年に税理士登録、相続財産問題や相続税対策などにも幅広く対応している。 相続問題の相談実績は年100件を超える。豊富な法律相談経験により、依頼者への親身な対応が非常に評判となっている。
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