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FAQs

2022.01.12
先々代名義の空き家を処分したいのですが、どうすればいいでしょうか。

Q 祖父の名義のままになっている自宅不動産があります。父が亡くなってからは母が1人住んでいましたが、その母も数年前に亡くなり、それ以来、空き家となっています。建物は築50年以上が経過しており、老朽化しているため、倒壊して通行人にケガをさせないか心配です。早く処分してしまいたいのですが、どうすればいいでしょうか。

A まず、不動産の名義人である祖父の出生から死亡までの戸籍関係書類を取り寄せ、現在の相続人の氏名・住所を調べることが必要になります。そのうえで、相続人全員で遺産分割協議のうえ、誰が祖父の自宅不動産を相続するのかを決めるのが原則となります。
  ただし、相続人が多数に枝分かれしている場合や、住所が各地に散らばっている場合などには、1枚の遺産分割協議書に相続人全員の署名押印をしてもらい、印鑑証明書を取り付けることが困難を極める事態も想定されます。
  そのような場合には、相続分の譲渡・放棄により、相続人をできる限り集約した上で、集約後の相続人から、残りの相続人全員を相手取った遺産分割調停を申立てるなど、裁判手続を活用することが有効な解決方法となります。
  上記の遺産分割調停などにより、自宅不動産を最終的に一人(あるいは数人)の名義に移転することにより、老朽家屋を解体し、土地を売却するなど、自宅不動産を処分することが最終的に可能となるのです。

弁護士の解説

総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、日本全国の総住宅数のうち空き家の占める割合は13.6%を記録し、調査時点において実に848万9000戸もの空き家が存在していたことになります。このような空き家の増加は、景観の悪化や災害発生の原因となり、犯罪の温床ともなり得るなど、大きな社会問題となりつつあります。

平成27年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」においては、そのまま放置すれば倒壊等著しく危険となるおそれのある状態にある空家を「特定空家」に指定することで、自治体が所有者に対して「建物の解体や修繕」」「立木竹の伐採」といった助言・指導・勧告・命令ができ、従わない場合には罰金や行政代執行を行うことができるようになりました。

また、これまでは、土地上の建物が建てられていさえすれば、「住宅用地の特例」として土地の固定資産税は減免されていましたが、「特定空家」に指定された場合、特定空家が建っている土地について、固定資産税は減免されず、税負担が大幅に増えることになりました。

このように、空家をいかに解消していくかが大きな社会的課題となっている中ではありますが、設問の事例のように、空家となっている自宅不動産が先々代名義のまま長年放置されていたような場合、その解消は容易ではありません。とりわけ、名義人の現在の相続人が多数に枝分かれしており、住所も各地に散らばっている場合、相続人全員による遺産分割協議は困難を極めます。

そこで、以下のような方法を採ることが有効と考えられます。

相続分の譲渡

相続分の譲渡とは、遺産全体に対する共同相続人の割合的持分を譲渡することをいいます(民法905条)。

相続分の譲渡により、譲渡人は、遺産に対する持分を有しなくなり、以後、遺産分割協議に加わる必要がなくなる一方、譲受人は、譲渡人が有していた遺産に対する持分を承継し、遺産分割手続に関与することになります。

相続分の放棄

相続分の放棄とは、共同相続人がその相続分を放棄することをいいます。

相続分の放棄は、相続放棄(民法915条1項)と似ていますが、

➀相続放棄では、相続が開始したことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述を行うことが必要なのに対して、相続分の放棄では、時期に制限はなく、方式も問われないこと、

➁相続放棄は、相続財産も相続債務も共に承継を拒否するものであるのに対して、相続分の放棄は、あくまで相続財産の承継を放棄する意思表示であり、相続債務についての負担は免れないこと、

➂相続放棄では当該相続人が当初から相続人でなかったとして、相続財産が他の相続人に帰属することになりますが、相続分の放棄では、当該相続人の相続分を、他の相続人がもとの相続分割合に応じて取得することとなります。

遺産分割調停の活用

相続分の譲渡・放棄を行うと、譲渡や放棄をした者は、以後、遺産分割調停手続に関与する必要がなくなります。そして、家庭裁判所から排除決定を受けることにより、当事者としての地位を失うことになります(家事事件手続法43条1項・258条)。

したがって、相続財産を取得することを特に希望しない相続人や、相当額を支払ってもらえるのであれば相続財産には特にこだわりのない相続人に対して、遺産分割調停の前や調停手続中において、相続分の譲渡・放棄をしてもらうことにより、相続人を必要最小限の範囲に集約することが可能となります。

こうして集約された相続人間において、遺産分割調停手続を活用することにより(または、遺産分割調停の中において相続人を集約することにより)、相続人全員に対して個別に話し合いをするよりもはるかに効率的に、遺産分割に向けた話し合いを進めていくことが可能となります。

また、万が一、遺産分割が完了する前に相続人の1人が亡くなられた場合であっても、相続人全員との個別の協議であれば、亡くなられた方の相続人と一から協議を再開することになりますが、相続分の譲渡・放棄をした後に亡くなられたのであれば、亡くなった方の相続人が相続分の譲渡・放棄の効果を覆すことはできず、相続分の譲渡・放棄があったことを前提に、協議を進めていくことができます。

相続人の住所が各地に散らばっている場合であっても、いったん遺産分割調停手続が係属すれば、裁判所を通じて、電話や書面によるやりとりで協議を進めていくことができますし、最終的に調停を成立させる場面においても、遠隔の地に居住するなどの理由により裁判所への出頭が困難と認められる場合には、受諾調停の手続(家事事件手続法270条1項)を採ることができます

以上のような裁判手続を最大限活用することにより、遺産分割を最終的にまとめることが可能となります。

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この記事の執筆者

入江・置田法律事務所

弁護士・税理士・家族信託専門士

置田浩之(おきた ひろゆき)

専門分野

相続、相続税、家族信託、企業法務

経歴

東京大学大学院法学政治研究科卒業後、東京都内の大手銀行に勤務。その後、大阪大学法科大学院に入学。司法試験合格後、平成22年1月に弁護士登録、大阪府内の法律事務所勤務を開始。平成27年12月、大阪・阿倍野に弁護士の入江貴之とともに事務所を開設。また、平成24年に税理士登録、相続財産問題や相続税対策などにも幅広く対応している。 相続問題の相談実績は年100件を超える。豊富な法律相談経験により、依頼者への親身な対応が非常に評判となっている。
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