解決事例
- 2020.09.04
- 一部分割により,小規模宅地の特例適用を可能とし,相続税の納税資金等の確保に成功した相続税申告の事例
事案
依頼者は亡くなられたお父様(被相続人)の長男でした。被相続人には,依頼者と二男,長女の3人の相続人がいました(奥様は早くに亡くされています)。 |
依頼者はもともと地主の出身で,大阪市内に多くの不動産をお持ちでしたが,その中には,土地上に老朽家屋が立ち並び,空き家が目立つ状態のものも多々見受けられました。
被相続人は,晩年,ハウスメーカーから,いまの資産状況のままでは多額の相続税負担が生じるシミュレーション結果が出たことに危機感を持たれ,生前,銀行から借り入れをして,賃貸需要が見込まれる3か所の土地上に賃貸アパートを1棟ずつ,合計3棟建てられました。
そのおかげで,賃貸アパートを建てた土地の相続税評価額を大幅に下げることに成功し,また,賃貸アパートからの収入も上がってきたため,預貯金も貯めることができました。
被相続人は,他に生命保険金(但し,受取人指定なし)と小規模企業共済に加入していました。
3棟目の賃貸アパートを建ててから数年後,被相続人は亡くなりました。
なお,被相続人は,遺言書等は特に作成していませんでした。
解決策
本事案では,被相続人が生前,賃貸アパートを3棟建てるなど,相続税対策に積極的に取り組んでおられたとはいえ,他に所有されていた不動産が多くあったため,相続税総額で1000万円ほどかかることが見込まれました。
しかも,賃貸アパートであれば,相続税評価も比較的単純に計算できますが,被相続人が所有されていた土地の中には,老朽家屋が立ち並ぶ土地や,私道が通っている土地,建て替え時にセットバックが必要な土地など,相続税評価が困難な土地も存在しました。これらの土地については,相続人間で分割しようにも,評価額をいくらと見るかで意見が分かれ,現実に分割するのに困難を伴うことが予想されました。
そこで,弁護士の立場から,被相続人の遺産全体を申告期限内に分割するのは諦め,比較的分割しやすい賃貸アパート3棟と預貯金,生命保険,小規模企業共済について,一部分割することを提案しました。一部分割は民法上の根拠規定もあり,遺産分割の実務において広く行われています。
一部分割することによって,賃貸アパート3棟は,依頼者を含む相続人3名がそれぞれ銀行借り入れとともに取得することとし,預貯金,生命保険,小規模企業共済についても,容易に分割できました。
一部分割することにより,賃貸アパートについて,貸付事業用宅地として,小規模宅地の特例を適用できますので,その分,相続税総額を抑えることに成功しました。預貯金等の金融資産はすでに各相続人が取得していますので,相続税の納税資金や被相続人の葬儀費用等に困ることもありません。
一部分割の対象以外の不動産については,「3年以内の分割見込書」とともに,未分割として申告することになります。未分割の不動産については,申告期限から3年以内という,十分な期間的余裕の中で,評価額をいくらとするか,どのように分割するかを,相続人間でじっくり話し合いすることとしました。
大阪の相続・遺言・相続税に強い 入江置田法律事務所の解決事例
※2020年5月28日更新
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この記事の執筆者
入江・置田法律事務所
弁護士・税理士・家族信託専門士
置田浩之(おきた ひろゆき)