解決事例
- 2020.09.04
- 被相続人が死亡後、相続登記が未了のまま、2次相続、3次相続が発生したため、相続人10人の共有状態となっていた不動産につき、遺産分割協議により、その解消に成功した事例
・事案
依頼者の叔父にあたる方には、昭和40年頃に建てられたご自宅が大阪府八尾市にあり、夫婦で長らく住んでいました。依頼者は、小さい頃に父(叔父の弟)を亡くしていましたが、父が亡くなってからも、母に連れられて、よく叔父の家に遊びに行くことがあり、叔父夫婦も依頼者を子どものようにかわいがってくれました。そして,叔父は依頼者に対して、「自分たちには子どもがいないから、自分たちが亡くなったら依頼者が家を継いで住んで欲しい」と、常々言っていました。
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平成20年に叔父が亡くなりましたが、叔父の死後も、叔父の妻(依頼者の叔母)は自宅の登記名義を叔父のままにして居住し続けました。叔父の法定相続人は、叔母(叔父の妻)と、代襲相続人として、叔父の甥2人(叔父の弟の子ども)、相談者とその弟(叔父の弟の子ども)の合計5人でしたが、特に遺産分割協議はなされないままの状態でした。
その後、平成25年には、叔母が亡くなりました。叔母の相続人は、叔母の弟が1人、妹が2人、甥が1人、姪が1人の合計5人でした。
その後、平成27年には、叔母の妹の1人が亡くなりました。叔母の妹の相続人として、娘が2人いました。
したがって、叔父が所有していた八尾市の自宅は、遺産分割未了のまま、2次相続、3次相続が発生したことにより、合計10人の相続人の共有状態となってしまいました。
相談者は、もともとは大阪市に住んでいましたが、叔母が亡くなってから、叔父が所有していた自宅を建て替えて、そこに移り住むつもりでした。ところが、土地が叔父の名義のままであることから、今のままでは銀行から住宅ローンを組めないと言われてしまいました。
そこで、叔父名義の土地を相談者の名義に変更するにはどうしたらいいか、相談に来られたのが本件です。
解決方針
まずは、相談者の叔父、叔母、叔母の妹の3人の被相続人につき、その相続人の確定させることから取り掛かりました。膨大な量の戸籍謄本を取り寄せ、壮大な家系図が出来上がりました。
次に、住民票を取得し、相続人全員の住所を確定しました。その上で、相談者の叔父の自宅を巡るこれまでの経緯と、相談者に自宅を相続させる旨の遺産分割協議書に署名押印してもらいたい旨を記した文書を作成し、郵送しました。
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相談者以外の7人からは署名押印がもらえましたが、残り2名(叔母の妹の子ども2人)からは返信がありません。2人のうち1人は大阪府内に住んでいたことから、自宅を何度か訪問しましたが、いずれも留守でした。
そこで、遺産分割協議書に任意で署名押印をもらうというこれまでの方針を変更し、相談者を含む8人から委任を受け、署名押印がもらえない2人の相続人を相手取って、大阪家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることにしました。
相手方2人は姉弟で、姉は大阪に、弟は東京に住んでいました。第1回調停期日には、弟は欠席でしたが、姉のほうは出席してきました。そこで初めて、相手方2人の意向を聞くことができました。相手方2人の意向としては、叔父名義の自宅について、依頼者が取得することを認める代わりに、自宅の評価額の法定相続分に相当する金銭を代償金として支払ってほしいとのことだったのです。
その後、期日間において、相手方らと代償金の金額について交渉した結果、ようやく、依頼者と相手方ら双方が合意するに至りました。
最後にもう一つ、問題がありました。調停を成立させるには、申立人らだけでなく相手方も家庭裁判所に出廷することが必要ですが、相手方のうち一人は東京に住んでいたため、大阪家庭裁判所に出廷することが困難でした。そこで、受諾調停の手続(家事事件手続法270条1項)を採ることとしました。受諾和解であれば、期日に出廷しなくとも、それに代わる受諾書面を裁判所に提出すれば、調停案に合意したとされるのです。
その結果、遺産分割調停をまとめることに成功し、叔父名義であった自宅土地の登記名義を依頼者に移すことができました。依頼者は自分の名義となった土地を担保に住宅ローンを組み、新築した家に住むことができるに至りました。
コメント
ある方が亡くなったのに、相続人間で遺産分割協議をせず、不動産の登記名義もそのままにして放置しておくと、2次相続、3次相続といったように、次々と相続人が枝分かれしていき、遺産である不動産は相続人全員の共有状態となってしまいます。 |
この共有状態を解消するには、相続人全員が合意のうえ、遺産分割協議を完了させることが必要ですが、お互い見ず知らずの人同士であり、住所も日本全国バラバラとなると、全員が合意のうえ協議を整えることは困難を極めます。そして、全員の合意が取れず、時間が経過していけばいくほど、4次相続、5次相続といったように、次々と相続が発生し、相続人が際限なく枝分かれしていくのです。こうなってしまっては、その不動産の登記名義を移転することは事実上不可能となり、大切な資産が凍結状態となってしまいます。
本件はまさに、上記のような弊害の発生した典型例でしたが、相続問題に精通した弁護士が入ることで、共有状態の解消に成功することができました。同じような状況に直面した方は、手遅れにならないうちに、できるだけ早い段階で、相続専門の弁護士に相談されることをお勧めいたします。
大阪の相続・遺言・相続税に強い 入江置田法律事務所の解決事例
※2020年5月28日更新
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この記事の執筆者
入江・置田法律事務所
弁護士・税理士・家族信託専門士
置田浩之(おきた ひろゆき)
専門分野
相続、相続税、家族信託、企業法務
経歴
東京大学大学院法学政治研究科卒業後、東京都内の大手銀行に勤務。その後、大阪大学法科大学院に入学。司法試験合格後、平成22年1月に弁護士登録、大阪府内の法律事務所勤務を開始。平成27年12月、大阪・阿倍野に弁護士の入江貴之とともに事務所を開設。また、平成24年に税理士登録、相続財産問題や相続税対策などにも幅広く対応している。 相続問題の相談実績は年100件を超える。豊富な法律相談経験により、依頼者への親身な対応が非常に評判となっている。