解決事例
- 2020.09.04
- 交通事故の被害により事理弁識能力を失った方の成年後見人として、遺産分割協議を行った事例
事案
依頼者は、フォークリフトオペレーターや倉庫内作業員としてこれまで働いてきましたが、50歳半ばに差し掛かったある日、交通事故に遭われました。
その結果、右肩甲骨を粉砕され、右肩関節の可動域制限を受ける後遺障害を負うとともに、事故を機に、認知症の症状が出始めるに至りました。 |
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その結果、依頼者はこれまでの仕事に従事することができなくなりました。
事故後しばらくは、労災による補償や加害者側保険会社からの休業補償が出ていましたが、事故から1年を過ぎた頃にこれら補償も止められてしまい、依頼者の家族は生活に困窮する状況でした。
依頼者は、三人兄弟の末っ子で、兄が二人いました。依頼者は、以前に父が大阪府吹田市に自宅を購入する際、自分も購入資金の半分を出しており、登記上も父と依頼者とが2分の1ずつ共有していました。
依頼者が交通事故に遭った2年後、依頼者の父が亡くなり、依頼者と兄らの3人で遺産分割協議をする必要がありましたが、依頼者は事故の影響により事理弁識能力が相当低下しており、本人が協議できる状況にはありませんでした。
また、依頼者の兄らは、父の自宅について、依頼者が有している2分の1の共有持分についても父の遺産であるとして、争う姿勢でした。
そのような状況の中、依頼者の奥様が当事務所に相談に来られたのが本件です。
解決方針
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まず、精神科において、依頼者の診断書を取得のうえ、依頼者の奥様を申立人として、家庭裁判所に後見開始審判の申立てを行いました。
後に交通事故の示談交渉と遺産分割協議が控えているため、後見人は当事務所の弁護士自身が就任することとしました。 |
そのうえで、交通事故、遺産分割協議の双方について、依頼者の後見人として交渉に当たりました。
まず、交通事故については、後見人の立場で被害者請求を行い、後遺障害12級の等級が認定されたことから、依頼者の家族の生活費を賄うためにも、保険会社と早期の示談解決を図りました。
依頼者の兄らとの遺産分割協議についても、兄らは当初こそ依頼者の2分の1の共有持分について争う姿勢であったものの、空き家となった自宅を速やかに売却し、売買代金から税金や諸費用を控除した残額を、各人の持分に応じて分配する当職からの換価分割の提案を最終的に受け入れるに至りました。幸いなことに、自宅を仲介手数料無しで買い取るとの不動産業者も見つかりました。
依頼者らの父の遺産分割協議書を取り交わし、父の共有持分2分の1につき、兄らと依頼者が各3分の1ずつ登記(したがって、依頼者が3分の2、兄らが各6分の1の共有状態)したうえ、依頼者と兄らの3人を売主として、上記不動産業者に売却し、売却代金は1:1:4で分割することとなりました。
コメント
認知症などにより、判断能力が低下している方が相続人にいるにも関わらず、相続人間で遺産分割協議書を取り交わしている例が散見されますが、そのような遺産分割協議は法的に疑義が生じ、後日、無効となるおそれがあります。 |
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判断能力に問題を抱えている相続人については、精神科などにおいて家庭裁判所所定の診断書を取得し、後見開始相当であれば、弁護士などしかるべき専門家を後見人に就けたうえで、遺産分割協議に臨むことが不可欠となりますので、十分ご注意ください。
大阪の相続・遺言・相続税に強い 入江置田法律事務所の解決事例
※2020年5月28日更新
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この記事の執筆者
入江・置田法律事務所
弁護士・税理士・家族信託専門士
置田浩之(おきた ひろゆき)
専門分野
相続、相続税、家族信託、企業法務
経歴
東京大学大学院法学政治研究科卒業後、東京都内の大手銀行に勤務。その後、大阪大学法科大学院に入学。司法試験合格後、平成22年1月に弁護士登録、大阪府内の法律事務所勤務を開始。平成27年12月、大阪・阿倍野に弁護士の入江貴之とともに事務所を開設。また、平成24年に税理士登録、相続財産問題や相続税対策などにも幅広く対応している。 相続問題の相談実績は年100件を超える。豊富な法律相談経験により、依頼者への親身な対応が非常に評判となっている。